私の新人時代、あるとき突然、数字が変わりました。
7月:1台 8月:2台 9月:2台 10月:10台(売上換算で約1,000万円)
わずか3ヶ月で、月間の受注台数が10倍になりました。特別なトークを覚えたわけでも、新商品が出たわけでもありません。変えたのは、たった1つだけです。
「訪問前に、お客様のことを徹底的に調べるようになった」
それだけです。
それまでの自分は、何を調べていなかったのか
恥ずかしながら、それまでの自分が訪問前に調べていたのは、この4つだけでした。
- 導入年月
- 月額リース料金
- 保守料金体系
- 月間の平均使用枚数
つまり、「コピー機そのもの」の情報だけです。お客様の会社が何をしていて、誰が意思決定者で、過去にどんなやり取りがあったのか。そこには、まったく興味を持っていませんでした。
支店長との同行で突きつけられた質問
ある日、支店長との同行訪問が決まりました。事前準備として、支店長からこんな質問を次々に投げかけられました。
- コピー機以外に、当社との取引はあるか
- 前回は、どの営業が、お客様の誰と、どういう理由で契約に至ったのか
- 最近のコピー機の修理状況はどうか
- そもそも、この会社は何をしている会社なのか
- 社長は若手なのか、それとも二代目なのか
正直、答えられない質問がほとんどでした。コピー機の型番やリース条件は完璧に頭に入っていたのに、目の前の会社そのものについては、何も知らなかったんです。
調べてから行くと、初対面でも関係ができる
この質問に答えられるよう、次の訪問からは徹底的に調べてから客先に向かいました。
結果は、面白いほど変わりました。
初対面のはずなのに、商談が驚くほどスムーズに進みます。「うちのこと、そんなに調べてくれたんですか」と、お客様の方から距離を縮めてくれることすらありました。一度の商談で信頼関係ができ、そのまま契約に至るケースが増えていきました。
なぜ「調べてから行く」だけで、これほど変わるのか
これは根性論ではなく、経営学者スティーブン・コヴィーが著書『7つの習慣』の中で説いている考え方と、驚くほど重なります。
コヴィーは、人間関係において最も重要な習慣の一つとして、**「まず相手を理解しようとし、その上で自分を理解してもらう」**という順番を挙げています。多くの人は、この順番を逆にしてしまう。自分の言いたいことを先に話し、相手を理解するのは後回しになる。
営業も同じです。
多くの営業は、「自社の商品をどう説明するか」から準備を始めます。お客様を理解する前に、理解されようとしてしまう。
でも、本当に効くのは逆の順番です。先に相手を理解してから、初めて、理解される準備が整う。
お客様のことを調べてから訪問するというのは、単なる情報収集ではありません。「あなたのことを、事前にちゃんと知ろうとしてきました」という姿勢そのものが、初対面の警戒心を解き、信頼の土台になっているんです。
訪問前リサーチ・チェックリスト10
支店長に投げかけられた質問をもとに、訪問前に確認しておきたい項目をチェックリストにしました。商談前に、いくつ答えられるか試してみてください。

7個以上答えられるなら、十分な準備ができています。4〜6個なら、あと一歩。3個以下なら、コピー機の型番だけを覚えて訪問していた頃の自分と同じ状態かもしれません。
明日からできること
- 次の商談の前に、このチェックリストを開いて、答えられない項目を1つだけ埋めてから訪問する
- 商談の冒頭で、調べた内容を一言添える(「御社は〇〇に力を入れていらっしゃるんですね」など)。この一言だけで、相手の警戒心はかなり下がります
まとめ
「理解してから理解される」
これは話し方のテクニックではなく、順番の話です。自分の商品を理解してもらう前に、相手を理解する。この順番を守るだけで、初対面の商談でも関係は驚くほど早く築けます。
弊社では、この「訪問前リサーチ」を型にして、若手営業向けの事前準備研修や、管理職向けの商談同行・振り返りの研修としてお渡ししています。
「うちの若手は、商品の説明はできるが、お客様のことを聞かれると答えられない」
心当たりがあれば、問い合わせからご連絡ください。
現状をうかがった上で、どこから手を入れると一番早く変わるか、一緒に整理します。
参考文献 ・スティーブン・R・コヴィー『7つの習慣』(キングベアー出版)