一言で言うと、これは「自分のしたいことを、していいか相手に同意を得る」というテクニックです。
「~させてもらってもよろしいでしょうか?」
この一言を先に挟むだけで、相手は自分のことを尊重されていると感じます。
そして、一度「YES」と言ったら、人はその後の自分の言動を、その「YES」に一貫させようとする傾向があります。
なぜ、小さなYESが後の行動を縛るのか
これは心理学者ロバート・チャルディーニが著書『影響力の武器』の中で説明している、「一貫性の原理」と呼ばれる現象です。
人は、一度下した決定や、一度口にした言葉に対して、後々まで一貫していたいという強い欲求を持っています。小さな「YES」であっても、一度同意した以上、それを裏切る行動は取りづらくなるのです。
商談で言えば、「質問してもいいですか」「提案書を出してもいいですか」という、ごく小さな確認への同意が、後の商談全体の流れを、こちらに有利な方向へと少しずつ傾けていきます。

具体的な使い方
とにかく、自分がしたいことを、「~させてもらってもよろしいでしょうか?」という形で、相手に委ねてしまうのがポイントです。
- 「冒頭、2、3ご質問させてもらってもよろしいでしょうか?」
- 「1点だけ、営業的なPRをさせてもらってもよろしいでしょうか?」
- 「一度、提案書を出させていただいてもよろしいでしょうか?」
どれも、こちらがやりたいことをそのまま伝えるのではなく、「やっていいですか」という確認の形にしているのがポイントです。
アポが欲しい時期こそ、この一言が効く
見込み化につながるアポが、どうしても欲しい時期があります。
電話は繋がるものの、「今ちょっと忙しいから」「来週の予定が見えないから」と言われて、そのまま諦めてしまう。よくある場面です。
そこで、こう言ってみてください。
「お忙しい中、本当にすみません。来週もう一度、お電話だけさせてもらってもいいですか?」
この小さな「YES」を取っておくと、来週改めて電話をかけて、相手が忙しくしていたとしても、無下にされる確率がぐっと下がります。
謝る立場が逆転する、心理効果
さらに、こんな効果が働くこともあります。
「今週はお忙しいということなので、来週少しでいいのでお時間いただいてもよろしいでしょうか?」
こうやって確認・承認の「YES」を取っておくと、来週になって電話をかけた際、相手からこう言われることがあります。
「ごめん、今週も忙しいので、来週もう一度電話もらえる?」
本来、お願いしているのはこちら側のはずなのに、謝る立場が逆転するのです。
些細なことに見えて、これは商談全体の主導権に関わる、非常に大きな効果です。
今日から試してみること
- 次の商談の冒頭で、「質問させてもらっていいですか」を意識的に使ってみる
- 電話でのアポ取りで、「もう一度お電話させてもらっていいですか」を試してみる
- 提案書を出す前に、「一度出させていただいていいですか」と一言添えてみる
自分のしたいことを、命令や依頼ではなく、確認の形にして、相手にボールを預ける。
これを意識するだけで、商談の空気は変わっていきます。
まとめ
「確認・承認のYESで商談をコントロールする」というテクニックは、特別な話術ではありません。
自分がしたいことを、「~させてもらっていいですか」という一言に変換するだけの、シンプルな習慣です。
まだ習得できていない方は、今日、試してみてください。
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参考文献 ・ロバート・チャルディーニ『影響力の武器』(誠信書房)