「営業の基本」シリーズの2回目です。
今回は、信頼関係を築くうえで、最も大事なスキルだと私が考えるコミュニケーション力を取り上げます。
コミュニケーション力とは
コミュニケーション力とは、対人的なやり取りにおいて、お互いの意思疎通をスムーズにする力です。言い換えれば、人との関係性を築く力でもあります。
コミュニケーションの手段は、大きく2つに分けられます。
- 言語:言葉そのもの
- 非言語:目の動き、表情、態度、声のトーン、身振り手振りなど
非言語も、大事なコミュニケーション力
コミュニケーション力と言われると、つい言葉そのものに意識がいきがちです。
ただ、非言語も、同じくらい重要です。
この点でよく紹介されるのが、「メラビアンの法則」です。
アメリカの心理学者メラビアンが1967年に行った実験では、言葉の内容と、表情や声のトーンが食い違っているとき、相手の感情や好意を読み取る手がかりとして、次の割合が報告されました。
- 表情・視線・しぐさなどの視覚情報:55%
- 声のトーンや話す速さなどの聴覚情報:38%
- 言葉の内容:7%
つまり、大部分(93%)の情報を、非言語から得ていることになります。
数字を使うときの注意
この法則は、よく「話の内容は、7%しか伝わらない」と誤解されます。
実際には、感情や好意など、気持ちを伝える場面で、言葉と態度が食い違っているときに当てはまる実験結果です。
商談の説明内容そのものが、7%しか伝わらない、という意味ではありません。
ここから言えるのは、言葉と態度が食い違うと、相手は態度のほうを信じるということです。
「ありがとうございます」と言いながら、無表情でいれば、感謝は伝わりません。

コミュニケーション力は「4つの力」でできている
「言語」は「伝える力」と「聴く力」に、「非言語」は「伝える力」と「読み取る力」に分けられます。
- 言語力では、「正確に伝え、正確に受けとる」意思疎通が重要
- 非言語力では、「信頼関係を築くこと」が重要
① 言語の「伝える力」:結論から話す
言語の伝える力は、分かりやすさが一番です。結論から話し、そのあとに理由を述べるほうが、相手には分かりやすくなります。
✕「先日の件ですが、いろいろ調べていまして、その結果、…」 ○「先日の件は、A案をおすすめします。理由は2つあります」
② 言語の「聴く力」:最後まで聴く
聴く力は、相手の伝えたいことを、最後までしっかり聴くことです。
話を聞きながら、「はい」「ええ」といった相槌や、オウム返しで、言葉で共感することも大切です。
内容が理解できないときは、そのままにせず、聞き直します。
「すみません、勉強不足でして。今の〇〇は、どういうことか教えていただいてもよろしいでしょうか」
聞き直すことで、相互理解が深まります。
③ 非言語の「伝える力」:誠実さが伝わる態度
非言語の伝える力は、相手に次のように思われる、表情・態度・声のトーンにすることです。
- 「誠実な方だな」
- 「丁寧な方だな」
- 「親切な方だな」
- 「配慮のある方だな」
また、「笑顔」と「真剣な顔」のメリハリも重要なポイントです。
そして、相手に関心を持つ、相手に共感するという基本姿勢を忘れないでください。
たとえば、「この人は何を言っているのか」という批判の感情は、態度に出て、相手に伝わります。
そうなると、こちらの話を素直に聞いてもらえません。
完全な間違いと言える内容でない限り、一旦、相手の話や意見に身を寄せることを意識してください。
④ 非言語の「読み取る力」:相手の身になる
読み取る力には、ある程度の「相手の身になる」訓練や経験が必要です。
ただ、今すぐできることもあります。
相手に関心を持ち、「ええ」の相槌と、「いいですね!」の共感の姿勢を示すことです。
これは、返報性の法則につながります。あなたが関心と共感を示せば、相手からも、あなたへの関心と共感が返ってきます。
これが、非言語で最も重要な、信頼関係を築く第一歩になります。
なお、コミュニケーションで大切な質問力については、「営業の基本」の1つとして、別の回で取り上げます。
今週やってみてほしいこと
次の3つに絞って、取り組んでみてください。
- 結論から話す:報告や説明の冒頭を、「結論から申し上げます」で始める
- 「ええ」「いいですね」を、声に出す:相手の話に、言葉で反応する
- 一旦、身を寄せる:反対意見でも、「そういう見方もありますね」と、まず受けとめる
まとめ
- コミュニケーション力は、意思疎通をスムーズにし、関係性を築く力
- 手段は、言語と非言語の2つ。言葉と態度が食い違うと、態度のほうが信じられやすい
- 4つの力:言語の「伝える力」と「聴く力」、非言語の「伝える力」と「読み取る力」
- 結論から話し、最後まで聴き、誠実さが伝わる態度で、相手の身になる
- 関心と共感は、返報性の法則で、相手からも返ってくる
4つの力、セルフチェック
最後に、4つの質問で、ご自身を振り返ってみてください。
- 報告や説明は、結論から話せているか
- 相手の話を、最後まで聴けているか
- 自分の表情や声は、誠実さを伝える形になっているか
- 相手の立場に、一旦身を寄せられているか
2つ以上、迷ったものがあれば、それが今週の課題です。
周りに若手の営業の方がいらっしゃれば、この記事を紹介していただけると嬉しいです。
参考文献
- Mehrabian, A. (1971). Silent Messages. Wadsworth.
- Mehrabian, A., & Wiener, M. (1967). Decoding of inconsistent communications. Journal of Personality and Social Psychology, 6(1), 109-114.