「期間限定」「数量限定」「本日限り」「限定30個」。
こうした言葉を見た瞬間、つい気になってしまった経験はないでしょうか。
今回は承諾心理シリーズの最終回、「希少性」を取り上げます。
ある実験では、同じ牛肉の説明に「ある情報」を加えただけで、注文がいつもの6倍になったと報告されています。
承諾心理シリーズについて
このシリーズでは、ロバート・チャルディーニの『影響力の武器』で紹介されている、人が「はい」と言いたくなる心理を、営業の現場に落とし込んで解説してきました。
- 返報性
- コミットメントと一貫性
- 社会的証明
- 好意
- 権威
- 希少性(今回)
(最近の版では「一体感」が加わり、7つの原則として紹介されています)
希少性とは
希少性の原理とは、「手に入りづらくなると、その機会がより貴重なものに思えてくる」という心理です。
品物の数が少ない、あるいは少なくなりつつあると、人はそれを欲しくなります。
一般に、手に入りづらいものは価値が高いことが多いため、私たちの中で、無意識の自動的な心理反応が働くのです。
実験でも確かめられている
『影響力の武器』では、希少性の力を示す例として、輸入牛肉を扱う会社の実験が紹介されています。スーパーなどに牛肉を販売する会社が、顧客を3つのグループに分けて、説明を変えました。
- 第一のグループ:いつも通りの説明。「安くて、いい輸入肉が入りました」
- 第二のグループ:上の説明に加えて、「輸入牛肉の供給が、この先数か月、少なくなりそうです」という情報を伝えた
- 第三のグループ:上の2つに加えて、「この情報は、まだ一般には出ていないもので、うちの会社が独自のルートで得たものです」と伝えた
結果は、第二のグループがいつもの2倍、第三のグループがいつもの6倍の注文でした。
ポイントは、「少なくなる」という情報に加えて、その情報が特別なものであると伝えたことです。
希少な「もの」だけでなく、希少な「情報」にも、人は動かされます。

営業での使い方:希少性に「もう1つの情報」を足す
営業の現場でも、希少性はすでに使われているはずです。
- 「メーカー決算限定の価格です」
- 「御社だけの特別価格です」
ここに、もう1つ、プラスの情報提供ができると、信憑性が上がり、承諾してもらいやすくなります。たとえば、次のような言い方です。
「実は、半導体の価格が今後上がるという話を、独自のルートで入手しました」
「重要なお客様に先にお伝えしている情報なので、他のお客様には口外しないでくださいね」
限定という言葉だけでなく、なぜ限定なのか、なぜあなたにだけ伝えるのかを添えることで、お客様の受け止め方が変わります。
使うときに気をつけたいこと
希少性は、非常に強い力を持っています。だからこそ、次の点を守ってください。
① 事実に基づく希少性だけを使う
「本日限り」と言いながら、翌日も同じ条件で提示する。
「残りわずか」と言いながら、在庫は十分にある。
こうした嘘の希少性は、発覚した瞬間に信頼を失います。
期限や数量には、必ず本当の理由を用意します。
② 「独自のルートで得た情報」は、本当に独自のものだけ
メーカーや取引先から正式に得た情報、自分で調べて得た情報など、根拠を説明できる情報だけを伝えます。
確認できていない噂を、独自情報として話してはいけません。
③ 「口外しないで」は、守れる情報にだけ使う
秘密にしてほしい、と伝える以上、情報そのものが機密に触れないか、事前に確認します。
守秘義務のある情報や、他社・他のお客様の情報は、話してはいけません。
④ 焦らせるためではなく、判断を助けるために使う
希少性は、お客様に冷静な判断をさせにくくする力でもあります。お客様のメリットになる情報かどうかを基準にします。
今週やってみてほしいこと
ここぞという商談を1件選び、次の3つを準備してみてください。
- 本当の限定理由を1つ書き出す:決算、在庫、納期、価格改定など、事実として説明できるもの
- 「プラスの情報」を1つ用意する:市況の変化、メーカーの動き、他社の動向など、根拠を説明できるもの
- 伝え方を決める:「実は、〇〇という情報を入手しています。御社には先にお伝えしたくて」のように、なぜ今、この方に伝えるのかを添える
まとめ
- 希少性とは、手に入りづらくなるほど貴重に思える心理
- 牛肉の実験では、「独自の情報」を加えると、注文がいつもの6倍になったと報告されている
- 限定の言葉に、「なぜ限定か」「なぜあなたにだけか」の情報を添える
- 嘘の希少性は使わない。期限・数量・情報には、必ず根拠を持つ
- 焦らせるためではなく、お客様の判断を助けるために使う
6つの承諾心理を、チームの武器にする
6回にわたって、返報性、コミットメントと一貫性、社会的証明、好意、権威、希少性を見てきました。
どれも、知っているだけでは変わりません。
商談の流れの中で、自然に、誠実に使えるかが分かれ目です。使い方を間違えると、お客様の信頼を失います。
是非承諾心理を使いこなして、トップセールスに駆け上がってください!
参考文献
- ロバート・B・チャルディーニ『影響力の武器』(誠信書房)